晴れ晴れ句会 第十五回 平成二十一年二月二十八日(土)於東京・根津「晴れ晴れ家」
*四点
ぶらんこや父がときどき会いに来る 池田ブランコ
飯蛸の途方に暮れて墨を吐く 中村正則 ◎石川氏特選
*三点
春立つや歩かば着かぬところなし 川合健生 ◎泰子特選
朧月気付かぬほどの泣きぼくろ 中村正則
*二点
手の届く春の闇もう寝ましたか 池田ブランコ ◎川合氏特選
風船を手に浮き上がる燕尾服 池田ブランコ ◎中村特選
地にある椿もてあそぶ赤い爪 中村泰子 ◎喜連川氏特選
小春土手矢切の渡し音は無し 柳原尚彦 ◎佐藤氏特選
つばくらめ妻にナイフを投げる芸 池田ブランコ
もて遊ぶ春日七色ガラス玉 石川鐵男
広告主募集看板余寒かな 川合健生
LED青く淋しく冬木立 喜連川覚
*一点
春満月スケートボードの跳ねる音 池田ブランコ
春の夕去年の駄洒落呟きぬ 石川鐵男
甘味処お食事処春の山 川合健生
啓蟄や建設中のマンション群 川合健生
雪の朝ビニール傘は白を増す 佐藤健二
如月の街で明るく名を呼ばれ 柳原尚彦
<晴れ晴れ句会+ vol.2>
●席題:骨折・三角・せせらぎ・紅梅・木蓮・派遣村 のうち三題
*五点
骨折のギブスに寄せ書春休み 喜連川覚
*三点
廃墟の都紅梅の凛と咲く 中村泰子
*二点
木蓮のアパート今日も口喧嘩 石川鐵男
白木蓮もうすぐ一年生ですね 川合健生
せせらぎに身を寄せている山葵の子 中村泰子
*一点
紅梅の窓ぴかぴかに磨きあり 石川鐵男
三角定規手渡して卒業す 川合健生
紅梅の鶯の声たどたどし 喜連川覚
骨折で大名行列スキー場 佐藤健二
---------過去投稿の移設に寄せて---------
俳句って、短い文学と言われますが、私小説なのかファンタジーやフィクション、日記なのかが曖昧で更に一度作作者の手を離れると受け手の解釈にその内容が委ねられる部分があり移ろうようでありまた端々に真実のようなものがあるようで、その小さな小さな句を拾い読んでいくと何か得るものがあるようで、また作者は発句した際の心境が少し共有できるようで直接的でなくホタルの発光のようにジワりと染み入る感覚が面白いなと思える部分だったりすることに今更ながらに気付かされました。
というのも、晴れ晴れ句会、長いもので15年もやっていると鬼籍に入られる方もおり、あぁあのときあの方はこういう心境だったのかな?とか、こういうブルースを帯びていたんだな。とか負けん気、潔さがカッコいいな。とか改めて受け入れられるのが面白いところです。
句会をやってる瞬間は、締切に追われる学生のようにゴールラインを切ればとにかく終わり。あとは選句で素敵な句をとって、選に残ればアフターの酒がうまい。坊主になれば虚無の世界。という凌ぎ合いの渦中にいて浮きつ沈みつしている訳ですが、日が立つとまた違う見方ができる。時間が立つといい塩梅に熟成されるというのが今日の発見かもしれません。この熟成もおそらく長過ぎると酸敗。時流が変わりすぎて読み込むのに一苦労という状態になり、伝えたかった心境などがスッと入り込まなくなったりするのでしょう。鮮度が高ければよいわけでもなく、長く時間が経てば良いわけでもない。発酵食品やお酒のような面白さがあるのだなとも。まぁ、その辺がわかった様な気になったこともまた少し続けていみようかなというモチベーションに変わったりもするのかなと。細かいパケットを世に放ち続けつつ今日を始めたいと思います。
佐藤健二2023.07.5朝イチ